身体拘束等適正化のための指針
1 身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体拘束等」という。)は、利用者の生活の自由を制限することであり、利用者の尊厳ある生活を阻むものです。
社会福祉法人別府発達医療センター(以下「当法人」 という。)では、いずれの施設においても利用者の尊厳と主体性を尊重し、身体拘束等を安易に正当化することなく職員一人ひとりが身体的・精神的弊害を理解し、身体拘束等廃止に向けた意識をもち、身体拘束等をしないケアの実施に努めます。
(1)関係法令等における身体拘束等禁止規定の遵守
当法人では、「児童福祉法に基づく指定障害児入所施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成二十四年厚生労働省令第十六号)」、「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成二十四年厚生労働省令第十五号)」及び「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)」(以下、「運営基準」という。)における身体拘束等禁止規定に基づき、サービスの提供にあたって、利用者本人又は他の利用者の生命又は身体を保護するために、緊急・やむを得ない場合を除き、身体拘束等を行いません。
(2)身体拘束等の内容
身体拘束等とは、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為で、「介護保険指定基準」に掲げる以下の行為を言います。
① 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛ること
② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛ること
③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲むこと
④ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないようにするなど、四肢をひも等で縛ること
⑤ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないようにするなど、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するため、ミトン型の手袋等をつけること
⑥ 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子のテーブル等を付けること
⑦ 立ち上がる能力のある人に、立ち上がりを妨げるような椅子を使用すること
⑧ 脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せること
⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛ること
⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させること
⑪ 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること
(3)緊急・やむを得ない場合の三要件
利用者個々の心身の状況を勘案し、疾病・障害を理解した上で身体拘束等をしないケアを実施することを原則としますが、次の3つの要件をすべて満たす状況にあっては、必要最低限の身体拘束等を行うことがあります。
① 切迫性 … 利用者本人または他の利用者、職員等の生命又は身体が危険にさらされる可 能性が著しく高いこと
② 非代替性 … 身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
③ 一時性 … 身体的拘束その他の行動制限が一時的なものであること
2 身体拘束等の適正化に向けた体制づくり
当法人では、身体拘束の廃止に向けて「虐待防止委員会(以下、「委員会」という。)」を設置し、身体拘束等の原則廃止、虐待防止に向けた取組を行います。
(1)委員会の目的
① 各施設・事業所から報告された身体拘束等の事例の集計及び分析
② 身体拘束等の発生時の状況等の分析、身体拘束等の発生原因、結果等の取りまとめ、当該事例の適正性と適正化策の検討
③ 報告された事例及び分析結果の職員への周知徹底
④ 適正化策を講じた後の効果の検証
⑤ 身体拘束適正化、虐待防止に関する全職員への教育研修の企画及び実施
(2)委員会の構成員
① センター長(総括虐待防止責任者)
② 事務局長及び大分療育センター所長(虐待防止責任者)
③ 各施設・事業所の虐待防止担当者
④ 事務局担当職員
⑤ 必要に応じて苦情解決委員会の第三者委員等の外部委員を招集することができる
(3)委員会の開催
委員会は、別府発達医療センター及び大分療育センターで各々年4回(3か月に1回)定期的に開催し、必要に応じて、両センター合同で開催します。また、必要に応じて臨時に開催します。
3 身体拘束等の適正化のための職員研修に関する基本方針
身体拘束等の適正化に向け、支援に関わるすべての職員に対して、身体拘束等の適正化に関する基礎的内容や適切な知識を普及・啓発するとともに、利用者の人権を尊重したケアの励行を意識づけるため、職員研修を実施します。
(1)研修の内容
① 利用者の人権を最優先に考慮し、身体拘束等は廃止すべきものであること
② 安易に「やむを得ない」という理由で身体拘束等を行わないこと
③ 安易に身体拘束等を正当化し、許容しないこと
④ 身体拘束等廃止に向けて、常に努力と創意工夫をし続けなければならないこと
⑤ 人権を尊重したケアの本質を考え、全員の強い意志でチャレンジをすべきこと
⑥ 医療・福祉サービスの提供に誇りと自信を持って臨むこと
⑦ やむを得ず身体拘束等を行う場合、利用者及びご家族等に対して十分に説明を行い、常に解除に向けた努力を怠らないこと
(2)研修の開催
① 定期的(原則として6月及び12月の年2回)に研修を実施
② 新採用職員に対しては、年度当初に研修を実施
(3)研修の記録
研修の実施内容については記録して、保存します。
4 身体拘束等発生時の対応に関する基本方針
利用者本人または他の利用者等の生命、身体を保護するための措置として、緊急・やむを得ず身体拘束等を行わなければならない場合は、次に定める手順に従って実施します。
(1)カンファレンスの実施
当該施設・事業所の委員会委員を中心とした関係職員により、原則として身体拘束等を行う前に、拘束による利用者の心身の損害や拘束をしない場合のリ スクについての検討を行うとともに、現状が①切迫性 ②非代替性 ③一時性の3要件のすべてを満たした緊急・やむを得ない状況かどうかについて確認を行います。
上記のリスク・要件を確認・検討した上で、身体拘束等を行う場合は、拘束の方法、場所、時間帯、期間等について協議し、施設長(又は所属長)が実施を決定します。
(2)利用者本人及びご家族等に対しての説明
利用者本人及びご家族に対して、身体拘束等の内容・理由・時間帯・期間・場所・解除に向けた取組方法を説明し、充分な理解を得た上で同意書を作成します。
また、身体拘束等の同意期限を越え、なお拘束を必要とする場合は、事前に実施内容と今後の方向性、利用者の状態等を説明し、同意を得た上で拘束を延長して実施します。
(3)記録と再検討
運営基準に基づき、施設・事業所の虐待防止担当者は、身体拘束等の発生ごとに、当該利用者の様子、心身の状況、緊急・やむを得なかった理由及び経過、身体的拘束等を選択した時のカンファレンスの内容等を記録し、保存します。また、身体拘束等の早期解除に向けて、拘束の必要性や方法等についてのカンファレンスを毎日実施します。
再検討の結果、身体拘束等を継続する必要がなくなった場合は、速やかに拘束を解除し、その旨を利用者本人及びご家族等に報告します。
実施した身体拘束等については、月1回、施設・事業所において身体拘束等の妥当性の検討を行い、その結果を分析・検証のため委員会に報告します。
(4)マニュアルの整備
身体拘束等の実施及び解除の手続きを適正かつ円滑に行うため、身体拘束等の実施記録及び利用者本人及びご家族等への説明・同意書等の様式等を定めた身体拘束等適正化マニュアルを整備します。
5 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
本指針は、施設・事業所内に掲示するとともに、当法人のホームページに掲載し、利用者及びご家族等、すべての職員がいつでも閲覧できるようにします。
6 その他身体拘束等の適正化の推進のために必要な基本方針
地域の他の法人・施設等とも協調し、当法人職員対象の研修以外にも共同で研修会を開催するなどにより、互いに研鑽を深め、身体拘束等の適正化が地域において、より深まるよう努めます。